冷たい彼-初恋が終わるとき-
「頭では、分かってるんです。で、でもやっぱり、」
ーー踏み出せない。
ほんの少しの勇気が、私にはない。
「椎名さんは乗り越えないと。椎名さんが、私が苦手なのも分かるよ、乙樹を見て傷付くのも分かる」
「…う、ん」
「それでも椎名さんはそれを乗り越えるべきなんだよ」
そう最後に呟いて、如月さんは唇を閉じた。
もう食べる気がないのか、中身が残ってあるのにも関わらず、お弁当箱の蓋を被せて、布で包む。正直、私も食欲なんてない。
喉の奥をグッと握られる感覚に耐える。