冷たい彼-初恋が終わるとき-
「桐生君に見てもらいたくて」
「…何をだよ」
「私が過去を払拭するところを」
「…ふざ、けんじゃねえよ」
薄く笑えば、桐生君は荒涼させる目を細め、私を見つめてきた。今までにないほど、鋭く泣きそうな表情で。
これが私か。私も今まではこんな表情をしてきたんだね。
「私はもう逃げたくない」
桐生君と、向き合いたいから。
分かってもらいたかった。私が吹っ切れた事を、前に進もうと歩き始めたところを。もう慰めてもらう必要なんか無いってことを。
「…お前バカだろ、何で自分から傷付こうとするんだ」
なのに、桐生君は否定する。
「…お前は、弱い」
「…うん」
「…大人しく俺に守られとけば良かっただろうが、何が不満だったんだ」
「…そうやって甘やかしてもらってたんだね、私は」
桐生君と対峙する私は、自分の足で地に付いている。
どれだけ桐生君の加護の中にいたのか分かった。
「…お前だって辛いだろ、わざわざ傷付く必要なんかなかった」
「それは自分に言い聞かせるため?」
桐生君は、絶句した。
私はそんな桐生君をじっと見つめる。
「自分を守るための言い訳だよね」
本当は桐生君を傷付けるつもりなんて無いけど、これは誰かが言わなきゃいけない事なんだ。