冷たい彼-初恋が終わるとき-
「私ね、桐生君に頼ってばかりだった」
「…それは俺もだ」
小声で反応してくれる桐生君にホッとして、添える手に力を込めた。
「誰かに縋り付きたくて、私達は傷を舐め合っていただけだよね」
現実を見ない振りをして、心を誤魔化して笑った。
夢のなかは、怖くないから。
「…それのどこが悪い。お前は俺と付き合った事を後悔してるのか?」
「…え…」
そんな事を聞かれて思わず目を見開いた。
桐生君は罰が悪そうに顔を歪めて、振り絞るような声を出す。
「…少なくとも俺は後悔していない。気持ち悪くなるくらい甘党だし、ブスだし、バカみてえに泣くし。言い出したら切りがねえ。でもお前といる時は楽しくて笑えた」
初めて聞く桐生君の胸のうち。
衝撃と歓喜で指先から震えていく。私が握っていたはずの手は、いつの間にか桐生君に握られていた。