冷たい彼-初恋が終わるとき-
「…お前は卑怯だ」
ぽつり、と小さく呟いた。
泣きそうに、苦しそうに、寂しそうに。
まるで迷い子のような表情をしている。
「…ムカつく、マジで」
「…ごめん」
「…ブス、デブ、コブタ」
「…ご、ごめんってば」
「…煩い泣き虫。ちょっとやそっとで泣き虫が変われると思うなよ。よくて泣き虫がウジ虫になるくらいだ」
八つ当たり気味に威圧されて、縮こまる。
握られていた手を離した桐生君は、目許を手で覆い隠した。
「…狡い。自分だけ、納得して、前を向いて。お前は俺を見捨てるのか」
寂しい。そう言わんばかりの声色。心が切なくなる。
孤独の海に沈む桐生君。
だから早くそこから出てよ。殻を割って。
「…お前も、俺を置いて行くのか」
「…そうだね。私は桐生君を置いて行くよ」
やっと歩き出せた私は、止まったままの桐生君を置いて行く事になる、それは否定はしない。