冷たい彼-初恋が終わるとき-
「でもね、私は桐生君から離れたりはしないよ」
「は、」
「ずっと傍にいる、桐生君が許してくれるなら、ずっと」
唖然とする桐生君に言葉を並べる。
今更気付いた気持ちだし、桐生君には届くか分からない。でも言わせて欲しい。私は、この思いを伝えたかったから前を見る事を決意したんだ。
「ーー私は、桐生君の事が好き」
思いの丈をストレートに口にすれば、桐生君の目が見開かれた。今までで、一番大きく揺らいだように見えた。
いきなりの告白で桐生君は呆然としている。本気で私が置いて行くとでも思ったのかな。別れようと告げたばかりなのに好きと言われて、困惑しているようだ。
でも言った私も、少し驚いている。まさか本気で好きになるなんて思わなかったから。
彫刻のように美しい桐生君の間抜け面は、人間味を帯びている。ぽかんと口を開けたままの桐生君が、何だか可愛かった。