冷たい彼-初恋が終わるとき-
「……っ」
抜け出そうとしてもがっちりとホールドされて、動けない。
それはまるで、私を離すまいとしているようだった。
桐生君の吐息が耳に触れる。
「…まだ日莉の事は忘れられない。でも、俺はお前の事も好きだ」
「え、」
「だからちょっと待ってほしい。先に行って、俺を待ってろ」
ゆっくりと囁いて、桐生君は私を離す。
耳にはまだ熱が残っている。
そっと耳に手を添えて呆然とする私に、桐生君は泣きそうな顔で笑い掛けた。
痛々しい、だけど何か決意したような強さを持った目で眉尻を下げて微笑む。
「俺も、立ち止まるのはもう止める」