冷たい彼-初恋が終わるとき-
「…溢れもの同士、お似合いだ」
「…桐生君…」
「…蓮だ。蓮って呼べよ。
ーー花霞」
「…っ蓮、君」
実らないと分かった。
叶わぬ恋だと知った。
自分は邪魔者なんだと。
でもどうも素直に認められない。
決して叶わぬ恋、もう諦め気味なのにどこか諦めきれない執念のようなもの。そして後悔がその目に宿っている。
桐生君はそれを拭い去ろうしようとしているのだ。私と言う、境遇の似た人間を利用して。
「――忘れさせてやる」
ゆっくりと、整った顔が近付いて来る。
長い睫毛、高い鼻筋、シミひとつない透き通った肌、切れ長の瞳。はっきりと顔立ちが見えるくらい近付けられてしまう。さっきは気にすることすら出来なかった、作り物のように綺麗な顔。その冷たい目には、ボーッと彼を見つめる私の顔が写っている。