冷たい彼-初恋が終わるとき-
「…忘れ、させてくれるなら」
そして私はゆっくりと頷く。
互いの利益のために承諾した。
ただ想い人を忘れたいがために慰め合う、私達は何て滑稽な関係を結ぼうとしているんだろう。
「…お前からキスしろ」
「え?」
「…早く」
急かされて私は行き場のない目を泳がせる。唇が触れあいそうなほど近い距離にある桐生君の顔。羞恥心が沸き上がるけど、ふと気付く。桐生君の目があまりにも悲しげなことに。スッと冷めていく熱。ただ、契約をするためのキス。恥ずかしくなるより、淋しさが募った。その揺れる瞳から逸らすように私は目を閉じる。
ゆっくり重ねられた唇に、私達の奇妙な関係が始まりを告げた。