冷たい彼-初恋が終わるとき-
それは弱さに似ていた

蓮side






乙樹と日莉の微妙な距離。
肩が触れあいそうなほど近いくせに手は繋がない。
ふと手が触れた瞬間、どちらともなくバッと手を離して顔を真っ赤にさせる。
目があうたび、照れ笑い。
後ろからふたりを冷めた目で見つめる、俺。



「蓮はさ。卑怯だね」

「…あ?」

「幼なじみっていう関係に甘んじてたくせに、奪われそうになった瞬間、慌ててる」



そんな俺を、俺以上に冷めた目で見つめるのが芽生だった。



「日莉の背中、押さないの?」

「…知るか」

「冷たいね"幼なじみ"なのに」



目の前にはもどかしいふたり。

背を押せば甘い雰囲気を漂わせるふたりの関係には名前がつくだろう。

だが俺は敢えてそれをしない。



「…お前もだろ」



芽生も俺と同じだ。



「僕?僕はどっちだっていいよ。乙樹が幸せなら」



コイツは昔からそうだ。
幼なじみの乙樹を一番に考え、思う。
自分の恋心を閉じ込めてまで。

中性的で美形な芽生はその顔が原因で虐められていた。青臭いガキ大将から芽生を助けていたのが、まるでヒーローのような乙樹だった。



「僕は乙樹の幼なじみ。蓮は日莉の幼なじみ。幼なじみの幸せを思うのが、ふたりのためなんじゃない?
…僕にとっては蓮も大切な腐れ縁だけどね」

「…嘘くせえんだよ」

「嘘じゃないよ。大切に思ってる」



珍しく微笑したかと思えば、すぐに目を細めて冷たさを宿す。「でも、」と俺を見る芽生は相変わらず絡み辛い。俺の行き場を無くす。壊すことを、きっと許さない。我関せずの態度を貫くくせに、肝心なときに牽制してくる。ふらりと現れて、ぐさりと棘を刺す。本当にふたりの仲を裂くことがすれば、芽生は俺を許さないだろう。



「邪魔、しないでね」




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