冷たい彼-初恋が終わるとき-
「今椎名さんを小田切君の応援に誘ってたんだけど、桐生君も来る?」
「…乙樹の?」
あからさまに眉を顰めた桐生君。
桐生君と小田切君の関係って?
恋人同士と言えども名ばかり。踏み込んでいいラインが分からずそんなことを考える。まるで正反対のふたり。どういう仲なのか分からない。
「…おい」
不意に、桐生君の目が私を捉えて驚いた。
「…お前が行きてえなら、行く」
「…っえ?」
「…どうする?」
じっと見つめられて狼狽える私のなかでは「俺だけを見ろ」と囁いた桐生君の声が駆け巡る。甘さなんてものはなく、背筋が凍るほど冷たい声。桐生君以外の誰かをーー小田切君を見ることは許さないと言わんばかりの瞳だった。
「…行か、ない。桐生君と帰る」
小さな呟きに満足した桐生君は私の肩を抱いて引き寄せる。
「…だってよ。コイツは乙樹なんて眼中にねえらしい」
色っぽく口角を上げる桐生君に、皆は一斉に顔を真っ赤にさせた。直視してしまった私も、口をパクパクさせて、言葉にならない。彼はいちいち刺激が強い。