冷たい彼-初恋が終わるとき-
「…お前、すぐ泣くな」
「な、泣かないよ!」
「…へえ」
「…な、泣かないもん」
小馬鹿にする桐生君を睨む。それでも目はきっと潤んでる。星絆ちゃん曰く私の目は常に潤んでるらしい。小心者だから仕方ない。小学生のときも中学生のときも"泣き虫"だとからかわれてきた。怖くて言い返せないし。事実だし。ずっと目をうるうるさせていた。
「…何かお前見てると虐めたくなる」
「…!?」
「…加虐心…だな」
「…あ…う」
「…泣くな。ウザい」
ほ、本気で泣きそう。ぽろりと涙が零れそう。なんて耐えていれば桐生君はいきなり、私の手を取り自身の指と絡めた。そう、指と指を絡めたのだ。所謂、恋人繋ぎと言うもの。
「なななな、何?」
「…狼狽えすぎだ。手繋いだだけだろうが」
「あ…あああああ…」
「…おい、落ち着け」
繋がれた手を凝視した。漸く分かった、差し出された手の意味。握手なんかと勘違いした自分が恥ずかしくなる。
手を繋ぐのは別に変な事じゃない。恋人だったら可笑しくない行為だ。でも私は、それを躊躇った。
嫌じゃないけど――恥ずかしい。皆の視線が集まってるなかで手を繋ぐなんて。