冷たい彼-初恋が終わるとき-
「ね、ねぇ桐生君」
「…あ?」
「あ、あの、迎えに来てくれてありがとう」
「…ああ」
「でもどうしてわざわざ…」
予め一緒に帰る約束したわけでもないのに迎えに来られて少し驚いた。
「…一応彼女だからな」
「彼女って…私?」
「…あ"?お前以外に誰がいるんだよ」
「で、ですよね…」
まるで自分の被害妄想だと言われた気がしたのか、桐生君は般若になった。真っ青になった私は俯いて震える。そして溜め息をつく桐生君に、不安になってしまった。
「き、桐生君は私といてもイライラしないの?」
「…は?」
「私おどおどしてるし、ハッキリしないところがあるから、皆よくイライラしてるの…」
「…だろうな」
何故か可哀想なものを見る目で見られた。
私は人見知りでハッキリ喋れないし、優柔不断でキッパリしないところがある。いつもおどおどしていて人の目を見て話さないから、たまに皆イラッとした顔をする。それを見て私が脅えて縮こまるから余計に皆を苛立たせてしまう。
「…俺もイライラする」
「…っ!?ご、ごめ…!」
「…お前が俺の名前を呼ばねえところとか」
慌てて謝ろうとすれば桐生君は意外なことを口にした。
「…いい加減、名前で呼べよ」
まさに蛇に睨まれた蛙。
「ごごごごごめ、ごめんなさい…っ」
「…理由は?」
「は…へ…?」
「…理由だよ、名前で呼ばねえ理由。寝ぼけてんのかテメエは。名前忘れたとか言ってみろ。今すぐ犯す」
「おおおおお恐ろしい!…じゃなかった!おおおおおお覚えてます!覚えてますとも!き、桐生蓮くんです!」
ぷるぷる震える私は後ろに下がろうとする。だけで桐生君が私の手をがっちり掴んで離さない。離して!なんて口が裂けても言えません。身長が150cmしかない私は、180cmほどの桐生君に見下ろされて顔面蒼白だった。