冷たい彼-初恋が終わるとき-
「…初めては全部、俺が奪ってやる」
桐生君はクツクツと愉快げに笑う。それが更に羞恥を煽られる。恥ずかしくなりすぎて、私は熱が迸る顔を隠すように俯いた。目線は行き場を無くして忙しなくうようよ動く。
そしたら桐生君が笑うの何の。
私の反応を面白がるにもほどがある。
「…安心しろ、お前のペースに合わせる」
「…〜っ」
「…理性が爆発しない限りは」
「…っえ!?」
妖しく目を光らせて「健全な男子高校生だから」と口角を上げる桐生君は狼だ。
「…手ェ繋ぐのもどうせすぐ慣れる」
「…お、お手柔らかにお願いします」
目を泳がせながら吃ると、桐生君はまたからかうように笑って私の手をギュッと握った。
桐生君の事は、何とか好きになれそうだと思う。
ただ、それが小田切君を上回れるかは分からないけど。