冷たい彼-初恋が終わるとき-
落合君もまた、スゴく有名な人。去年の春、美少年が入学したと噂になったらしいけど、そう言う事に疎い私は落合芽生君の事を同じクラスになるまで知らなかった。
初めて見た彼の印象は「こんな綺麗な男の子がいるんだ。」だった。中性的な美形で、人を寄せ付けないオーラ。あまり喋らない無口な人だと思ってたのにーー…。
話し掛けられるなんて、思ってもみなかった。
「…余計な事言ってんじゃねえよ」
「だって本当の事じゃないか」
薄く笑う落合君に私は戸惑った。
教科書が口実?
何だか居たたまれない気持ちになって俯くと、落合君に笑われた気がした。
「あまり困らさない方がいいんじゃない?次からは教科書くらいちゃんと持ってきたほうがいいよ」
落合君ってもっとクールなのかと思ってたけど案外茶目っ気があるのかな。
最近は、桐生君とこうして話し掛けられることにも慣れてきた。授業と授業の合間にはこうやって会いに来るから。でも、落合君を物凄い形相で睨み付ける桐生君は、やっぱり怖い。
桐生君が居るって言うだけでも目立つのに、それに加えて何故か落合君。目立たないはずがなかった。興味深げな男子の視線や、嫉妬や羨望が入り交じる女子の視線は痛いままだけど、この殺伐とした雰囲気には口を挟まない。