冷たい彼-初恋が終わるとき-




「本当に付き合ってるの?」

「…お前に関係ねえだろ」

「僕は椎名さんに聞いたんだけど」




肌をピリピリと刺激する空気。


怖すぎて目が潤んでいく。ソッと目を逸らせば窓際に座る星絆ちゃんと目が合ったけどあからさまに無視された。誰もこのぎすぎすした二人に触れない。




「それとも何?また"変わり"?」




落合君の嘲笑する声に思わず「え?」と呟くが、地を這うような低い声に掻き消される。




「…殺されてえのか、テメエは」




傍にあった机を蹴り飛ばして、人一人殺してしまいそうなほど危うい目付きをする桐生君。


その席の田中君は倒れた机を放置して「ぎゃああ!」と叫びながら逃げてった。教室の隅からは普段、地味でもなく派手でもないグループの会話が聞こえてきた。


「怖ぇ!マジ怖ぇよ桐生君!」
「無事の帰還ご苦労である!田中軍師!」
「怪我がなくて何よりだ!田中軍師!」
「俺殺されるかと思った!桐生君ヤクザ顔だし!痴話喧嘩ならよそでやれよ!寿命縮んだわ」


と小声で叫ぶ田中君と愉快なお友達。
ご、ごめんなさい。
あまりに悲痛な叫びに内心で謝った。


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