冷たい彼-初恋が終わるとき-



苦笑いしていれば、早乙女君はぶんぶんと顔を横に振った。



「い、いや、ちげえって。君のこと、平凡とか貶してるわけじゃねえし。そりゃあパッとするほどの美人でもねえけど……あ、」

「うん。美人じゃないから別にいいよ」

「わ、わりぃ。そう言うつもりじゃなくって。マジで違うんだって。なんつうか、すげえ可愛い子だと、思い、ました」



片言になる早乙女君にポカンとする。



「…あー…まぁ、コイツは雰囲気が、な」

「雰囲気?」

「ああ!それそれ!なんか見たときからすっげえ頭撫でたくなる子だと思ってたんだよ!小せえから庇護欲が沸いてくる!」



モヤモヤが吹っ飛んだかのように顔を輝かせる早乙女君は興奮気味に言った。そして何かを思い出したように早乙女君は私の顔をもう一度、見つめる。



「あれ?去年ミスコン出てなかった?」

「え…」



ピシッと凍り付く私の横で桐生君が「は?」と間抜けな声を出したのが分かった。


頬をピクピクと引き攣らせる私に気付いてるのかいないのか、早乙女君は可愛らしく笑みを深めた。



「やっぱりそうだ!そうかなって思ったんだ!君、去年のミスコン出場者だ!途中で棄権した子だろ?」

「あ…う…」

「何で棄権したの?君、地味だけど言い換えれば清楚なんだよね。化粧っ気もないし、結構タイプかも。何でこんな顔面ヤクザと付き合ってんの?蓮なんか止めて俺にしない?」

「ふぇ…」

「うわー、涙目やべえ。俺のサディスト魂が騒ぐわ。何かめっちゃ苛めたくなるんだけど。何なのこの子」



「その髪、地毛?」なんて言いながら早乙女君は髪に指を通してきた。お母さん譲りの栗色の髪の毛。苦手"かも"だった早乙女君は、物凄く苦手な人になってしまった。


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