ボーダー・ライン
毎晩ふたりで寄り添って
PIXI
165センチに満たない低身長、男にしては軽い声、そして年収は頑張っても200万円以下。
女性を満足させるスペックを何一つとして持ち合わせていない僕は「負け組」と呼ばれながら東京の片隅でひっそりと暮らしていた。
二流大学を卒業して早2年、僕、ダメ男の小谷鷹は今年度も正社員になれなかった。
終わったと言われた就職氷河期だけれど、一度生成された氷は暖かくなれば割れ砕け、波に乗って容赦なく押し寄せる。
つまりそういうもんなんだよ、社会って。
一旦溜まってしまった歪みは皆が思っている以上に尾をひく。いくらマスコミが「氷河期は終わった」と宣伝しても。
僕の何が悪かったと言えば、生まれた時代が悪かったのかな。
そのせいで、社会の奴隷生活を余儀なくされたんだ。
……言い過ぎました。
はい、これはただの言い訳です。
ごめんなさい。
すみません。大変申し訳ありません。
全ては僕の能力不足が原因なんです。
でも、そうやって何かに責任転嫁しないと、到底気が持たない毎日なんだよ。
可哀相だと思ってくれよ、彼女出来ない、お金もない、未来がない。
そんな僕のような若者達を、マスコミは何と呼んでいると思う?
「ロストジェネレーション」失われた世代、だって。
おかしいな、僕たちはこうやって必死に生きているのに。
とりあえず、今年は幸運にも派遣会社に住む部屋を安く貸してもらえたから、しばらくはそこのハケンで食いつなごうと思う。
目標や自己実現などを考える身分でもなく、そこが底辺と呼ばれる牢獄でも、堂々と僕は生きていく。