ボーダー・ライン
僕は再度パソコンを立ち上げ、メールボックスを開く。
『From サトミ
題 淋しいの……
From サトミ
題 今日はバイトでしたっ☆
From サトミ
題 行きたくない
From サトミ
題 朝の連ドラ
From サトミ
題 朝ごはん(添付ファイル付き)』
それらを僕は、彼女の言うとおり閲覧するべく古い順に開いていった。
何だ、別に他愛ない内容だ。
『朝ごはん』ではシチューの時のように、おいしそうなフレンチトーストの写真が添付されていた。
『朝の連ドラ』では、ドラマの感想や批評めいたことが羅列されていて、
『行きたくない』ではバイトに行きたくない彼女の心境がつづられていた。
誰にだって仕事へ行きたくない時はあるだろ。
と思いきや、『今日はバイトでしたっ☆』この文が示す通り、バイトから帰って来てからの彼女は非常にご機嫌である。
どうやら時給がちょっとだけ上がったらしい。
よかったな、サトミ。
サトミが僕にメールを読むのを促したのって、このことを伝えたかったのかな?
僕にたくさん褒めて欲しかったのだろうか。
かわいい奴。
だけど次のメールを見て、僕は思い知らされることとなる。
……僕は自惚れていた。
傷のなめあいに、溺れきっていた。
『淋しいの……』
と題された、妙なメール。
何も警戒せず、何も覚悟せずそのメールを開いた僕は激しく後悔することとなる。
『淋しいの……』