ボーダー・ライン

だからこそ、僕は毎日の「楽しみ方」を自分なりに工夫している。
やり方さえ考えれば、貧乏でも楽しく生きられるハズだろう?

そんな僕にとって、今一番の楽しみは、インターネットを介したコミュニケーションである。

中でも僕がハマっているのはSNSである、通称「PIXI」というサイト。
ここは会員登録をすれば基本的に無料で様々な友達作りの場を提供してくれる。

やり方と言えば、自分のプロフィールやブログをマイホーム(自分のページ)に掲載して色々なコミュニティ、つまり同盟に参加するだけ。
簡単だろ、これなら僕にだって出来る。

何より自分の見た目のコンプレックスを気にせずに、コミュニケーションできるということは素晴らしいことだ。


「ふー、疲れたぁ」
仕事が終わった夕方帰宅すると、僕は真っ先にパソコンの電源をオンにした。

それから、ボロボロの鞄を投げだして、作業着を脱ぐ。汗くさくなった下着のTシャツを脱いで、洗濯籠に放り込む。

帰りに買ってきたスーパーの半額弁当を小さな電子レンジに突っ込み、一缶98円の安チューハイを開ける。

その頃には電源を入れたパソコンの起動動作が終わり、自動的にインターネットに接続をしてくれるので、僕は酒を口に流し込みながらマウスを動かして、自分のお気に入りサイトから「PIXI」を選んだ。

するとIDとパスワード入力画面が表示されるので、言われるがままに入力を行う。

――瞬間、電子レンジから古風な「チーン」という音が聞こえた。

「あ、出来たか」
今時こんな音で出来上がりを告げるレンジは珍しいよな、だけどビンボーでもあったかいメシを食えるのはとてもありがたいことです。


ホクホク湯気の立つ弁当を早速パソコン前に運んで、僕は行動を開始した。
お楽しみの始まりだ。

行儀悪いと言われようが構わない、僕は右手に箸で飯をつまみ、左手でマウスを操り、SNS「PIXI」にログインした。

「あること」を切に期待しながら。

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