ボーダー・ライン
そしてそれはログインを終えると、まず始めに目に飛び込んできた。
『メールが24件届いています』
この表示に僕の胸はバクバクと高鳴った。
神様は僕の期待を裏切らなかった。
ホーム上段に『こんにちは、タカさん』という運営からのテロップが流れるが、そんな所には目もいかない。
どうでもいい。
僕はメールボックスを真っ先に開いた。
本来PIXIのホームページとは、そのユーザーのプロフィールサイト兼コミュニケーションサイトである。
ページ左側には僕のネット上の姿「アバター」と、友達一覧、参加コミュニティ一覧、右側には『タカのプロフィール』とブログが設置してある。
タカっていうのは僕のハンドルネームの事で本名そのまんま、何のひねりもない。
『名前 タカ
性別 男
年齢 24歳
血液型 A型
職業 会社員 』
プロフィール内容はこんな感じ。
ああ、いたって普通だろう。
特筆すべきは、例え派遣社員でも職業に会社員と書けること、これは素晴らしいことだと僕は思う。
だってそのおかげで余計なコンプレックスに悩まされずに済むんだから。
しかしその居心地良さすらも、「彼女のこと」に比べたら僕がここにいる理由としては小さなことに過ぎない。
始まりはどうであれ、今の僕は彼女とコミュニケーションをとるためにここPIXIに来ているんだ。
とにかく、生きていてくれ、無意味な癇癪をおこさないでいてくれ。
幸せでいてくれ、笑っていてくれ。
一人で地獄に落ちるのはやめてくれ。
「サトミ……」
僕に出来ることなら、何でもするから。
それが僕の、ハンドルネーム「タカ」がここにいるための存在意義なんだ。