ボーダー・ライン

メールボックスをクリックしてから一秒、ブラウザがページを読み込み始める。

だが、もしかしたらそれは僕の自意識過剰な思い違いなのかもしれない。
開けてみたらびっくり、24件ものメールは実はいたずら広告メールかもしれないし、今日は別の友人から、珍しくメールの多かった日なのかもしれない。


「馬鹿だな、僕は」
つい声に出てしまう。
そりゃそうだ、こんなに彼女にイレ込むなんて。掻き乱されるなんて。
「……会ったこともない女の子に」

そうだ、実はサトミとはたかがネットだけの付き合いであり恋愛関係もない、ただの「女友達」という関係なのだ。

加えてお互い好意を寄せていても、愛を誓いあったことは一度もない。
互いに友達以上、恋人未満の存在。
「傍目から見たらストーカーみたいに見えるのかな、僕は」


だが、これだけは自信を持って言える。
彼女には僕が必要なんだ。

だってそのサインを彼女はメールという形で、いつも僕だけにアピールするんだから。


僕の安パソコンと古びた回線は処理能力の遅さから、ゆっくり、ゆっくりと、メールボックスを読み込んだ。
処理状況を示すバーが、今にも止まりそうになりながら進むのがもどかしい。
「ああ、もう」

そして約1分にも及ぶ長い待ち時間の末、ついにその内容が僕の前に表された。

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