ボーダー・ライン
『メールが24件届いています。
新着順
From サトミ
題 淋しいの……
From サトミ
題 今日はバイトでしたっ☆
From サトミ
題 行きたくない
From サトミ
題 朝の連ドラ
From サトミ
題 朝ごはん(添付ファイル付き)
From サトミ
題 マジックタイム 』
「ははっ……」
飯を口に含んだまま、僕は腹で笑った。
思ったとおりだった、期待していたとおりだった。
メールボックスを埋め尽くしているメール24件は、全て彼女の「サイン」だ。
そして新着の中で1番古いメール、つまり時系列的には僕がログアウトして1番最初のメールには、
『From サトミ
題 大好きです…… 』
と、告げられている。
こっそりとそのラブレターが送られてきたのは、夜も明けようという早朝の4時である。
絶対にわざとだ。
「だから何で僕がログアウトした後に、いつもいつもそういう事するんだよ、この子は」
だが口では悪態ついていても、僕の心ははずんでいる、不思議なもんだな。
何だか身体と心がむず痒い。
僕は、女でもないのに。
そうやって僕が悶えていると、パソコン画面の粗末なスピーカーから「ピロリン」という軽快な音が流れた。
それはPIXIのメール着信音、どうやら小猫に僕の帰宅を感づかれたようだ。
メールボックスを再読み込みする。
すると新着メールが1件、
『From サトミ
題 おかえりなさいませ! 』
そう、24件ものメールを僕が全く読み終えないうちに、いよいよ御本人様の登場だ。
「サトミ、今日は元気そうでよかった」
僕は画面に語りかけながら、そのメールを開封した。