ヤンデレ兄弟と同居しているが、もう限界。

息を呑むほど艶やかでさらさらで、混じり気のない黒髪と、同じ色の切れ長の目。

長い睫毛が作る影や固く閉ざされた口元から、人懐っこそうな棗とは違いクールな印象を与えられる。


少女マンガ好きの私からすればこの容姿、雰囲気はまさに『クールだけど実はＳな学校の王子様』だ。たぶん登校するなり女子にきゃあきゃあ言われたりする。あと女性恐怖症設定も欠かせない。



付けていたヘッドホンを首にかけ、彼は軽く会釈した。




「あら、楓。この子がうりはちゃんよ」
「ふぅん……俺は楓だ」
「霊仙 向日葵です。よろしくお願いします」
「あぁ。わからないことがあれば遠慮せず、何でも聞け。色々大変だと思うが、俺も出来る限り力になりたい」




ぽかんと口が開いた。やだ楓さん、優しすぎじゃないですか。

どうやらさっきの少女マンガ厨的予想は外れたそうだ。まあ、そんなテンプレートなイケメンがわんさかいても困るけどね。それに何処かの偉人さんが言ってたとおり、やはり人を見た目で判断するのはよくないな。


そんなことを思っていたら、開いた口に何かが入れられた。