夜人【ヨルヒト】さん
(心霊サークル……スポット……)

その言葉の軽さに、トキコはため息をついた。

(そんなものじゃない。私が見たあれは……)

何度でも蘇る光景に、トキコは身震いした。

「ねえ、何かあったの? 何みたの? よかったら教えて」

好奇心に上ずった声が、気に障った。

(でもここで一人になりたくない……)

トキコは眉間にしわを刻んだまま、厭々口を開いた。

「3階の……女子トイレに、死体が……」

喉に言葉が詰まり、それ以上出て行かない。

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