夜人【ヨルヒト】さん
「ねえ」

難しい顔をして考え込んでいたユキオミが、トキコの顔を覗き込む。

「今から確認に行かない?」

「嫌!」

ユキオミの言葉が終わる前に、自分でも驚くほど大きい声が出た。

「絶対に嫌! もうあんなところ行かない……行けない、無理よ!」

「分かった、ごめん! だから静かに……」

口に指を当て、ユキオミが必死でなだめてくる。

「無理……」

恐怖で、新しい涙がトキコの頬を伝った。

曇った目で、夜空を仰ぎ見る。

(全部夢だったらいいのに)
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