夜人【ヨルヒト】さん
大股に歩み寄り、両手を勢いよくエミカの机に叩きつける。

バン、と鋭い音が教室に響いた。

「あんたさあ、昨日の夜ふざけたメールを」

「ケイタイ」

トキコの言葉を、低く唸るような声が遮った。ごぼりと水音がそれに混じって聞こえた。

底のない沼のような目が、トキコの視線を捕える。

「ケイタイ、あったよ。トキコが言うとおり、旧校舎のトイレに」

「……ちょっと、そんなことを聞いて……」

言い終わる前に、トキコは口をつぐんだ。

エミカが、スカートのポケットから取り出した物を、トキコの目の前にかざしている。

真っ二つに折れた携帯が、細いケーブルでかろうじて繋がり、ぶらさがっていた。
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