夜人【ヨルヒト】さん
「こんな風に何度も蹴られた。上がろうとすると、何度も、何度も」
エミカが静かに頷く。
夜人がチサエの指から足を離す。
「……溺れると、どっちが水面か分からなくなって、底に向かってもぐってしまうことがある」
チサエの指が、力無くへりから離れた。ゆっくりと水に飲み込まれていく。
「どこに助けを求めていいのか分からなくなる」
「……助けなんてなかった」
「そうだね」
夜人が目を閉じる。
水面に立ち昇っていた泡が、消えた。
藻が、ゆらゆらと揺れている。
エミカが静かに頷く。
夜人がチサエの指から足を離す。
「……溺れると、どっちが水面か分からなくなって、底に向かってもぐってしまうことがある」
チサエの指が、力無くへりから離れた。ゆっくりと水に飲み込まれていく。
「どこに助けを求めていいのか分からなくなる」
「……助けなんてなかった」
「そうだね」
夜人が目を閉じる。
水面に立ち昇っていた泡が、消えた。
藻が、ゆらゆらと揺れている。