夜人【ヨルヒト】さん
「……うっ……ぅ……」

微かな泣き声に、サナミは視線を泳がせた。

「チサエ? サナミだよ。どこ?」

耳を澄ます。

ややあって、またすすり泣く声が聞こえた。

その方向を見ると、「理科準備室」の文字があった。

(臆病なんだから……)

ため息をつき、サナミはわざと声を張り上げた。

「チーサーエ! かくれんぼはオシマイにしよ!」

足音を立てて準備室に近づき、ドアノブに手をかける。

「……サナ?」

ドアの向こうから、怯えた声がした。
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