二人の『彼』


その後もケイキさんと話をし、別れる頃にはもう完全に日が暮れていた。



将軍という役職が分かったところで、人が変わるわけではない。



ケイキさんはケイキさんだ。



「土産にでも持っていけ」



帰り際、ケイキさんが手渡してくれたのは、如何にも高級そうな酒瓶だった。



遠慮したけれど、ケイキさんは押しつけてくるので──断っておくが気持ちはちゃんと嬉しい──、持って帰ることになった。



四季に来たとき、酒以外を頼むことを条件に。



しかし俺一人でこんな高級そうな酒を飲むのは気が引けるので、結局新撰組に持って帰ることになったのだった。



「どうしたんですか?こんな高そうな酒……」



沖田さんは物珍しそうに、酒ではなく俺を見ながら、いつも通りの飄々とした態度で訊いてきた。



新撰組は幕府の直轄機関(多分)だし、将軍の顔くらい知っているだろう。



仮にも新撰組の端くれである俺が、将軍のお屋敷に遊びに行っていました、なんて言えるわけもなく。



「知人に貰いました」



嘘にはならなかったけれど、またひとつ秘密が増えてしまったのだった。
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