二人の『彼』
山崎と石
「山崎さん?何してるんですか?」
「……!
恭さん」
新撰組の屯所の廊下で会った山崎さんは、きょろきょろと辺りを見回していた。
監察である彼がこうも明白に挙動不審な行動をしているのは珍しい。
「探し物ですか?」
俺が尋ねると、ややあって、
「……ああ」
と、気まずそうな返答が返ってきた。
「何を探してるんすか?」
「…………」
と、この問いの返答にはさらに時間を要したのち、
「…………石」
と、ギリギリ聞き取れるくらいの小さな声が聞こえた。
しかし、探し物が石とはどういうことだろう。
石って……あの、道端に転がっている石のことだろうか?
ならば、新撰組内で探さなくても……。
何か特別な石なのだろうか?
「恭さんは、知らないか」
残念ながら、石の行方に心当たりはない。
道端の石をいちいち記憶してなどいないし、特別な石を見ていたとしても、ただの石としか認識していないだろうから、いいえと答えるしかなかった。
「一緒に探しましょうか?」
「……いいのか?」
どうせ土方さんのところへ行っても邪険にされるだけだし、沖田さんのところへいってもからかわれるだけだ。
暇ならば、と俺は頷いた。