二人の『彼』
桂と団子
「おっ」
「あっ」
桂さんと会ったのは、空の半分を雲が覆う、ある日の昼頃。
会ったのは実に数週間ぶりだった。
桂小五郎。
確か、のちの木戸孝允。
維新志士の中でも明治維新で大きな役割を担う人物。
……っていうのが俺の記憶にある教科書のイメージだったけれど、こうして会ってみると、そんな堅苦しいイメージは容易に覆る。
気さくで、大人びていて、周りをよく見ている。
そして本意ではなかったにせよ、名目上は敵である新撰組に入った俺をも気にかけてくれる、お人好し。
わかりやすく言えば、近所の年配や子供たちに好かれる、面倒見の良い人気のお兄さんみたいな感じ。
「捜してたんすよ」
今日逢えたのはたまたまだけれど、数日前から捜していたのは本当だった。
先輩から桂さん宛に、文を預かっていたのだ。
彼女も忙しいからと、もし桂さんを見かけたら渡しておいてほしいと、先日頼まれたのだった。
俺が文を渡すと、桂さんは人の良さそうな笑みで礼を言った。