二人の『彼』
予兆
朝の日差しが、部屋に入り込んでくる。
「…………」
次第に浮上する意識に、俺は目を開けた。
なんだか朝陽が、眩しすぎるように感じる。
「寝た気がしない……」
寝てはいるのだけれど、気がついたらもう夜が明けているのだ。
いや別に、夢を見ない場合そうだと言われればそれまでなのだが……。
思い返してみると、嫌な夢を見ていたような気がしなくもない。
最近、時々あるんだ。
激しくなっていく頭痛。
増していくノイズと砂嵐ような映像。
一瞬でも気を緩めたら、意識ごと持っていかれそうな感覚。
「……っ」
元の時代に、帰る時が近づいている──。
直感だけど、確信だった。
──巻き込んだのか
──お前が、あの女を
「……っ」
あの時。
否定できなかった。
いや、否定しなかったのだ。
考えないようにしていただけで、本当は俺も、気づいていたはずのことだった。
それを正面から奴に突きつけられ、向き合わざるを得なくなっただけ。
先輩にはこの時代に来る理由はない。
俺と違って。
きっと、俺が呼んだんだ。
来なくていい時代に。
「くそっ……」
今日は非番だけど、もう一度寝たら二度とここへは戻ってこられないような気がして、急いで布団を出た。