二人の『彼』
新撰組の屯所内、大広間にて。
新撰組の隊士たちは、近藤さんを前に集まっていた。
「時は満ちた」
近藤さんのよく響く声で、部屋の中は静寂に包まれる。
土方さんも、沖田さんも、齊藤さんも、山崎さんも。
他の隊士たちも、一様に真剣な表情で。
俺は今から、新撰組の歴史で一番有名だと言っても過言ではない、池田屋事件に立ち会おうとしているのだった。
だけど正直なところ、俺の気持ちはそこへ向いていなかった。
先輩に、あれ以来会っていない。
ぎくしゃくしたままだ。
解決してからこの戦に臨みたかった。
しかし今から何を言ってももうどうしようもない。
命がかかっているのだ、集中しなければ。