二人の『彼』
池田屋後日
俺が意識を取り戻したのは、新撰組の屯所だった。
頭には包帯が巻かれていて、動くとまだ後頭部に痛みを感じる。
「かっこわりぃ、俺……」
額に手を当てる。
あの夜の確かな記憶はないけれど、この包帯の感触が、何よりの証拠だった。
確実に、分岐点になったであろうあの事件──。
思えば、あの日は妙に頭が痛かった。
ブラックアウトを起こすかと、何度不安になったことか。
後頭部に残る鈍痛──これは、きっと刀で争ったときのものではない。
誰かに殴られたような痛みだ。
最後にブラックアウトを起こす寸前、確かに近藤さんの声が聞こえた。
───恭!!
状況を整理するに、近藤さんが暴走した俺を、殴って止めてくれたのだと思う。
近藤さんは何も言わないけれど、そうでなければこんな軽傷で済んだわけがない。
本当に、近藤さんには感謝してもしきれない借りを作ってしまった。
あのまま暴走していたら、俺を含め敵味方、どれだけ被害が広がっていたか分からないのだから。
情けない。
全く──情けない。
部屋からのぞく青い空を睨んで、俺は拳を握りしめた。