二人の『彼』
維新派
結局、なんだかんだで丸め込まれて、俺は新撰組に入ることになってしまった。
先輩は、と訊くと、沖田さんは「もうとっくに返しました」なんてあっさり言うもんだから、拍子抜けもいいところである。
俺の葛藤を返せ。
本当に詐欺師にでも転職したらどうかと思う。
なんて考えて虚空を睨みながら、夕焼けに染まった街を歩く。
新撰組の拘束から解放されて、帰路についた俺だが、勿論その帰路は現代へ向かっているわけではない。
悪い夢だ、と思うがその都度現実だということが体で証明されてしまうから、深く考えるのはやめだ。
まあ。
この帰路の先にいるのが、先輩でよかったとは、思う。
それほど悪い夢でもないのかもしれない、なんて甘い考えで、道を急ぐのだった。