バースデー・イブ
28歳の旅立ち

 16時の成田空港第2ビル。少し日に焼けたグローブトロッターの白いトランクを預けながら搭乗手続をする。19時発の飛行機であたしはニューヨークに行く。
 我ながらこの行動力に脱帽してしまうが、行ったところで果たして彼に会えるのかわからない。会えたところで何かあるとも思えない。しかしもうこの衝動は押さえることが不可能だ。
 フロントは手慣れた手つきで手続きをする。まだ窓側に空きがあるらしく側に席を取ってくれた。夜のフライトの星に包まれた感覚が好きだし、空の上から景色を眺めるのが楽しいから窓側の席は年甲斐もなく嬉しい。
 「ニューヨークへはご旅行ですか?」
 「ええ、今週末誕生日なのでご褒美に」
 それを聞いた彼女はパスポートを再確認し驚いた顔をした後、優しく微笑みパスポートを閉じる。
 「すてきな旅になるといいですね」
「はい。」
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