バースデー・イブ
涙とバッティング
金曜の仕事終わり7時過ぎに駅前広場で待ち合わせをする。
「ごめん呼び出して」
同じく仕事終わりの将吾がやってくる。
「とりあえずどっか入らない?」
そう訊く将吾に手短で入れるところがいいと言うと、すぐ近くにあるサイゼに誘われた。あたしがファミレス系で食事する事が苦手なの知っていたのに…スタバやタリーズを期待していたが、
将吾の5歩後ろを歩き、サイゼまでのわずかな道のりを無言で歩く。飲み会前なのか、うかれた学生たちとすれ違う方向とは逆行し、駅の裏通りへと向かう。
「知華さ仕事のツテでどっかレストランウエディング安くやることできない?10万以内とか無理かな?」
「は?」
この人はなにを言い出すのかと思い話を聞いていると、要は結婚するにあたり結婚式をしたいが、お互い貯蓄がなく出産費用を貯めたいため格安でレストランウエディングをしたいとのこと。
「あいつまだ20歳になったばかりで若いけど、こうゆうことはちゃんとしておきたいじゃん?」
「わたし経理だから詳しくないし、ツテもないよ。うちの課と営業は仲良くないし」
「そこを頼むよ…知華なら分かるだろ?転職したばかりで給料は少ないし、あいつはずっとパートだから貯金ないし…車の支払いでさらに懐厳しいし…それか、プロデュースとかはできない?ほら、今流行ってるじゃん、格安結婚式」
「だから、あたし企画とかでもないからそんなの無理だよ。あたしは結局経理なんだから、表立った仕事はできないって。どうせあたしは裏方なんだもん」
裏方の
「知華みたいに結局は新聞社が親会社の安定した会社で苦労しないで働いているやつには、俺らみたいなやつらの気持ちわからないよ」
そう投げ捨てるように言いライターを投げた後、
「それに、だいたい知華は苦労してないもんな。」
「わたしだって、苦労してないわけじゃないよ」
「じゃあどんな苦労してるの?」
「経理でもいいじゃん。安泰なんだから。それに苦労していないならティファニーのネックレスなんて買えないよ。それ…」
そう指さし「そんな大きなやつ、買えないよ」と言い
「別にたいした金額じゃないよ。今まで貯めてきたお金で買ったんだよ。欲しいものとかあっても多少は我慢したんだし…」
「自分へのご褒美とかなんなのか知らないけど、嫁が知華のインスタ見てティファニーいいなぁって言っていたんだよ。可哀想だろ?」
「美咲っちだってロエベの財布あげてるし…なのに俺たちにはお祝いすらないって…金無いの知ってるのに」
「ズルいし、がめついよ。」