バースデー・イブ

 「ひさしぶり」
 黒いチェロキーの前に立つユーは3年前に見たよりも凛々しく、
 「ひさしぶりね」
 「荷物貸して」


 車は走りだし空港を後にする。右車線を走る車とイエローキャブがアメリカに来た事を実感させ、なによりユーが隣にいる事が実感させた。馴れた手つきで左ハンドルの車を運転する。

 「ちーちゃん何しに来たの?」
 「観光だよ。ほら、あたし誕生日じゃない?ご褒美みたいな」
 「なんでニューヨークに?ちーちゃん香港のペニンシュラ憧れじゃないっけ?」
 「今はニューヨークに行きたいから有給くれって言ったら、今度旅特集考えているから下調べしてこいと言われたもんでご褒美旅行なのもあるけど半分仕事だよ」
 そう言うと笑いハンドルを軽く叩く。
 「なにそれ。ま、少し協力するよ。オススメのお店とか紹介するし、案内任せて」
 会いたくて来たなんて言えやしない。なんでこんな時にすら可愛いげのない態度をしてしまうのだろう。余裕かました口調で言い窓の外を見ると、ライトアップされたニューヨークの摩天楼が見えた。
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