バースデー・イブ

 目の前には領収書類やレシートと伝票が紙の山をつくる。給料処理のために各部署から届いたため、給料日前はいつもこんな感じだ。
 「営業のあいつ、接待でキャバ行きまくりだね。もうナイト情報紙作る会社に行けよ」
 隣からそんな不満が漏れつい同調してしまう。

 地域型の情報紙を作る出版社に大卒入社して3年目。あたしは変なノリで取ってしまった経理関係の資格を活かし経理事務の仕事をしている。本当は編集に回りたかったため移動を期待して経理で入社したがそう簡単に移動なんかできるわけない。
経理部は入れ替わりの激しい部署のため、いつの間にかベテランになってしまった。後輩ばかりになり、業務を中心になり行っている。やりたい仕事ではないし、文句ばかり言われてしまう…。こんなんだったら税理士事務所とかに入った方がマシだったわと思うけれど、羅列した数字をみるだけで目眩がしそうになるから行かなくて良かったと思う。
 なかなか減らない領収書の山と接待交際と言えばキャバクラ三昧の営業マンたちが嫌になる。現実世界の憂鬱さと先の見えない未来と、最近なんか素っ気ない彼氏の態度と、代わり映えのない今の生活がゼロの真ん中に映るような気がして恐怖を感じた。きっとこんな生活の繰り返しのせいで結婚したいとよけいに思うのかもしれない。

 「今度さ監査変わるみたいよ」
 「そうなんだ。この時期に珍しいね」
 「あそこの先生が体調崩したから急にみたいよ?それで今の担当くんが何件かは引き継いでくれるみたいけど大変そうだよね」
そんな会話を聞き流しながら、
 「知華さんは知ってました?」
 話を振られ
 「そうなの?」
 「知華さんが主に関わっていたから、知っていたと思っていました」
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