私は初めから病気だったワケじゃない!!
いつものように、
前から二列めの席につく。

隣はIちゃんだ!

私らデザイン科の教室は、
白い作業台に、
2人並んで座る。

初めてこの教室に入った時に、
ヘビメタの出で立ちのIちゃんの隣は、
空いていた。

自然と私は、
隣に座った。

美術研究所には、
個性的な出で立ちの人が、
多かったから、
私は、全然違和感なかった。

それからこの席が、
私らの指定席になった。

デザイン科の講師は、
本業がデザイナーで、
デザイン事務所の重役や社長さんだったり、
有名なドラマの題字を
スポイトで書いたという、
結構有名なイラストレーターでもあるデザイナーや、

私が落ちた大学でも、
教鞭をとっていらっしゃる本業印刷会社社長さんと、

有名新聞社OBの先生、

現役の仕事に直結した面子(メンツ)ばかりだった!

狭い学校という世界の中しか知らない小中高の先生とは違い、

社会人で、仕事の片手間に、
教えに来てくれる先生方だ!

1年目は、
道具の使い方から、
製図、レタリング、イラスト、感覚訓練、カメラ、印刷など、
基本的なことを学ぶ。

色彩の学問的な話も、
実際にカードを並べて貼り付けて視覚的にもわかるような作業が入っていた。

この時代、バブル景気の最中だった。

パソコン画面上で、
版下という、
印刷する元になるモノを
現在では作れるけれど、
この頃のパソコンでは、
まだ技術的に出来なかった。

新聞社で、
電算化が始まりだしたころなので、
文字印刷は、活版印刷や、写真植字(写植)だった。

現在なら、パソコン上で、
出来てしまう作業を
手作業で切り貼りして、
版下を作り、
それを製版するのだ!

製版は、手描き漫画をパソコンに取り込んで印刷する作業に例えたら、
ケント紙にインクで描いた漫画に、
台詞の部分を
印字した紙を貼り付けて、
印刷する元原稿を作る。
これを版下と言う。

この版下を
スキャナーで読み込むと、
画像がパソコン上に取り込まれる。

その画像を
印字する紙にプリントアウトさせる版を
パソコン上ソフトで作るものが、製版に当たる。

実際の一昔前の印刷会社では、

「台詞の部分に
印字した紙を貼り付ける」のは、
写植の文字を切り貼りして貼り付けていた。

写植というのは、
写真植字の事で、
1つの文字を、
大きさを変えたり、
斜体にしたり、
文字の間隔を広げたり、
詰めて打つ事が出来た。

写真の台紙は、
印画紙というもので、
光りが当たるところが、
色が変わるように加工された紙で、
薬品を通して定着させるものだ。

写植は、
カメラのレンズに
光りの向きや、
引き伸ばしをする原理を使って、
文字盤1つで作る事ができるので、
活字をしまう場所を取る活版印刷よりも、
便利だった。

光りが当たると全部色が変わるので、
写真のプリントするみたいに、
暗室で作業をするそうだ。

写植の文字盤の配列は、
特殊で職人技が必要だという。

印刷の方法や、
文章の文字の配列の決まり事、
そういう当時の実用的な方法を
私らは勉強した。
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