Dream。~君と私の応援歌~
「……俺、雫に思い出させない方がいいと思うんです」
「どういうこと?」
作詞ノートから心春先輩が顔をあげた。
「今の雫は、兄貴のことなんて忘れてる。兄貴を失ったことも。全部……。なのに、記憶を取り戻したら、また雫は兄貴を思い出して、兄貴を失ったことで悲しむ……」
もう雫の悲しむ顔は見たくない。
だったらいっそ、雫が悲しまないために兄貴のことを全部忘れたまま生きた方が……。
そのとき。
俺の頬に痛みが走った。
顔をあげると、心春先輩が涙を流しながら俺を睨んでいた。
ああ。俺、心春先輩に殴られたんだ。
頬にそっと手を当てる。