おまけのコイゴコロ
 

 ◇


あらゆる学年の女の子たちから山のようにチョコレートをもらった1ヶ月後。
彼はまた、甘い匂いを漂わせながらわたしの前に現れた。




「お疲れ大上。平山さんと森さんってまだいる?」

「……いるけど」


終礼後間もない頃、大きめの紙袋を手にわたしのクラスを訪れた宇佐美に頼まれ、名前の挙がった女の子ふたりに声をかける。

会長さまからの呼び出しだとわかった途端、彼女たちは帰り支度をほっぽり出して我先にと彼の待つ廊下へ飛び出していった。


……平山さんと森さん。
そういえば1ヶ月前、ふたりも宇佐美にチョコレート渡してたっけ。

ちらっと見えた紙袋の中身は、小分けにラッピングされた何か。
彼はバレンタインにお菓子をくれた人をみんな覚えていて、ホワイトデーにはちゃんとお返しをする。

去年は確か、お姉さんが余分に作ったパウンドケーキを人数分分けてもらったと言っていた。今年も同じような感じだろうか。


ばかにならない量なのに。
律儀なやつ。


 
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