おまけのコイゴコロ
 


 ◆


「……今年はえらく豊作ですね」


部屋の真ん中にどんと構える会室机の上に、これまたどんと山積みされているラッピングされたチョコレートたち。

誰のものかは一目瞭然。
ふわふわ漂ってくる甘い香りを鬱陶しく思いながら、わたしはそれらを次々と口に放り込んでいく宇佐美の向かいの椅子に腰掛けた。


「な、この量やばくない? 今まででいちばん多いわ! 食べ切れるかなあ」

「……あんたならそのくらい余裕でしょ」

「大上もちょっと食べる?」

「いらない」


甘いものは苦手だ。
知っているくせに、目の前で数え切れないほどたくさんのチョコレートを抱えて幸せそうな笑みを浮かべてみせる宇佐美が憎たらしい。

鞄をどさりと床に下ろし、頬杖をついて心の中でため息ひとつ。───だから嫌だったのに、今日の会室担当!



1年生の頃から一緒に生徒会で活動している宇佐美は、同学年男子の中ではずば抜けて顔がいい。背も高い。

全校生徒から顔と名前を覚えられる生徒会役員という立場上、学年問わずファンが多かったわけだけど、去年会長になってから彼の人気は爆発的に高まった。


そこからの本日2月14日、バレンタインデーである。


 
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