おまけのコイゴコロ
「甘いのだめってもったいないよなー、これとか超美味いのに! 普通に店で売ってそうなレベルなのに!!」
シェル型の手作りチョコマドレーヌを頬張りながら目をキラキラ輝かせる宇佐美に、またため息が出そうになる。
……そりゃおいしいでしょうよ。
みんなこの日のために何度も何度も試作を重ねて、いちばん上手く出来たものをあんたに渡してるんだから。
(これ本人たちに聞かせてあげたら、泣いて喜ぶだろうな)
この中に、本命チョコはどれくらいあるのだろう。
むしろ、本命チョコじゃないものなんてあるのだろうか。
うるさすぎず淡白でもない、上品な柄の包み。くるくるとカールがかかった細いピンク色のリボン。
味にも見栄えにも、見えないところにだってぜんぶぜんぶ気を遣って。心を込めて。
今の宇佐美の口の中にはきっと、甘さと一緒にたくさんの「好き」があふれてる。
「よかったね宇佐美。幸せ者だね」
「うん、めっちゃ幸せ」
甘いもの大好きな宇佐美は、会室担当のお供にいつもお菓子を持ってきておいしそうに食べているけれど。今日の宇佐美はまた一段といい笑顔に見えて。
そんな彼の幸せオーラに、ちくりと胸が痛んでしまう。