おまけのコイゴコロ
……ああもうだめだ。
去年もこんな気持ちになって。だから、今年はそうならないように、って。
今年こそは、って。
思ってたのに。
「……あ、」
「ん?」
「ここ、食べかす付いてる」
ふと気づきわたしが自分の口元をつんと指でつついてみせると、まじか、と宇佐美は食べるのを中断して手の甲でごしごし口元を拭い始めた。
なんだか子どもみたいで微笑ましい。
「取れた?」
「んー、まだ」
ほら。ここだよ。
笑いながら席を立って宇佐美の顔に手を伸ばし、唇のすぐ下にくっついていた小さなマドレーヌのかけらを指で取ってやる。
───すると。
離れる前に、なぜかその手を、宇佐美がぎゅっと掴んできた。
「……え、ごめん、顔引っ掻いた?」
「いや違う」
違う、って。じゃあなんだろう。宇佐美はなかなか手を離さない。
それどころか、わたしの手は彼の両方の手のひらですっぽりと包まれ、強く握りこまれてしまった。
宇佐美の顔を見ると、いつもの気の抜けたような笑顔ではなく真剣な色を含んだ眼差しに射抜かれて、───どくりと、心臓が大きく跳ねる。
「あのさ大上、なんで今日に限って俺たちふたりが会室担当当たってんのかなーとか思わないの?」