おまけのコイゴコロ
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大上のは食べるのもったいない、いちばん最後に味わって食べたい、とわたしのチョコクッキーを後生大事に鞄にしまい込もうとしていた宇佐美の手をなんとか止め、今この場で全部食べさせた。
だってこの力作揃いの中じゃわたしのがいちばん味が微妙でしょうに。
そんなものは一気に胃に詰め込んで、他のおいしいお菓子たちをゆっくり味わって食べるべきだ。
「えーっ、めっちゃ美味いじゃんこれ!! 固すぎずやわすぎず、しっとりサクサク感が絶妙だし! チョコレートの加減も丁度いいっていうか、ちょっと甘さ控えめなのが大上らしくてむしろいいっていうか!」
「リポートしてくれなくていいからさっさと食べて……」
目の前で食べられたら食べられたで、やっぱり少し恥ずかしい。
……ああ、でも、なんか。
(渡せて、よかったな)
勇気を出せ、がんばれと。
きっと、彼は背中を押してくれたのだ。
たくさんの中のひとつ。
まだまだ、おまけみたいなものだけれど。
甘さが香る穏やかな生徒会室の中。
わたしはこっそり、小さな小さな幸せを噛みしめていた。
『おまけのコイゴコロ』
-END-