ご近所さん的恋事情

入り口でかごを持ち、醤油を探す。上から吊るされている案内板を見て歩いた。醤油、醤油…ここかな。


「おっと」


缶詰を見ていた人にぶつかりそうになり、後ずさりをする。


「あ、すみません」


「いえ、あれ？瑠璃子さん？」


近所のスーパーで偶然出会う。この偶然はご近所さんならではだ。


「渉くん！びっくりしたー！いつ、出張から帰ったの？」


「さっき、帰ったばかりだよ。瑠璃子さん、それ買うの？」


瑠璃子のかごの中には今入れたばかりの焼き鳥の缶詰が２つ入っていた。


「うん、焼き鳥が食べたいなと思って。お惣菜になかったから、缶詰にしちゃった」


「なんだ。焼き鳥食べたいなら、とりこうに行こうよ」


缶詰よりも「とりこう」のほうが絶対に美味しい。焼きたてのほうが確実に美味しい。

瑠璃子は帰りに「とりこう」に行こうかと悩んだが、そのまま帰ってきたことを悔やんでいた。でも、ここで渉に会えて一緒に行けることになったから、素通りして良かったと思う。