ご近所さん的恋事情
「酔い潰れたら、介抱してあげるけど、ほどほどにしてね」


泡のきれいなビールを勢い良く飲んでいく姿は見ていて気持ちがいいが、別のことを楽しみにしている渉は、瑠璃子だけにしか聞こえない声の大きさで言う。


「え?ほどほどに?」


「うん。今日こそは全部見せてね。全部知りたいから」


せっかく泊まったというのに、何もしないで迎えた朝ほど虚しいものはなかった。同じ過ちを繰り返したくはない。渉の囁きに瑠璃子の頬は赤くなる。


「瑠璃子ちゃん、もう酔った?まだ二杯目だよね?」


早々と頬を赤くする瑠璃子を酔ったと店長が勘違いする。


「あ、うん。そうかもしれないです」


絶対に違うのに酔っているせいにしたかった。動揺を悟られたらもっと恥ずかしくなるから。


ほどほどにお腹が満たされ、ほどほどに酔いが回ったところで、渉が瑠璃子の手を引いて立たせる。会計を済ませて、外へ出る。


「ありがとうございました!」


「渉くん、頑張れよ!」
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