誰にも言えない、だけど好き。
〈before入学〉
あ、春休みのあの人
―ガラッ
「おおぉ………」
高校入試に合格してから、特にすることの無い、
ながーいながーい春休み。
わたしは、入学する予定の学校にひとり侵入していた。
ボロ校と評判のわたしの中学より格段と大きい教室は、
窓が大きいせいかキラキラして見える。
名前順だといつも早めだから、ここら辺…?
昔流行ってた某アイドルのシールの貼ってあるその机に座ってみる。
「あったけ~」
―ガタッ。
「わ、ちょっ、え………?」
声のするほうに振り返ると、
黒縁メガネの見知らぬ男。
お互い、ぽかんとした顔で見つめあう。
「え、新入生?ど、どした………?」
その顔のまま、その男が聞いてくる。
「その、きょうは見学しようと…そ、そちらは?」
「戸締まり確認で回ってるんだけど…」
せ、先生か…
一瞬、不審者かと思ったから、思わずほっとした。
「あっ、もう出ますね!すみませんでした!」
「お、おう、じゃ、気をつけてな!」
変なとこ見られたな……………
なんとなく気まずくて、わたしは逃げるように帰る。
ジャージ着てたから、体育の先生?
まさかのまさかだけど、担任とか?
・・・それだけはイヤ!
いろいろ考えながら帰ってるうちに、
いつのまにかそんなことは忘れ、
あの先生の顔も消えていった。