誰にも言えない、だけど好き。
〈after入学〉
げっ、担任発表
「1年生のみなさん、楽しみましょー!!!」
頭がぐわんぐわん揺れるくらい大きな生徒会長さんの声。
「いえーーーーーーーーーーーーーーーい!」
一応、おしとやか女子パラダイス!なはずの女子高だけど、
センパイたちの雄叫びに近い歓声がこだます。
とにかく楽しく!とにかく元気に!
が校風のこの学校。
中3の時の体験入学でこのパワフルさを見て
ここにしよう!と決めたけど、改めて驚いた。
さすがに、そのあとの校長先生とPTA会長さんの話は長かったけど。
「えー、次は担任発表に移ります。」
教頭先生の、優雅な声。
けど、わたしには悪魔のささやきにしか聞こえない。
「ねぇねぇ!えっと…橋本結衣ちゃん!」
ちょっとハスキーなかわいい声で話しかけてきてくれたのは、
これまた顔もかわいい隣の子。
少女マンガ並みのくりくりの目に、
ぷにぷにのほっぺ、
自然な栗色のさらさらツインテール。
もう、ウサギかリスにしか見えない。
美少女すぎて、緊張する…。
「えっと…ごめんなさい名前忘れちゃったかも。
うんと、萩原さん?だっけな…」
「わたしは萩原鈴!りん、でいいよ!
1年間おとなりさん、よろしくね!」
「う、うん、よろしく!り、りん…ちゃん」
「鈴でいいのに~じゃあ、りんは結衣ちゃんって呼ぶ~!
ねぇ、突然だけど、結衣ちゃんは、担任の先生だれがいいー?」
「え、担任…!?え、えと、あの先生かな…?」
いきなりすぎて、わたしはテキトーに赤メガネのおばさん先生を指差す。
「そっかー、優しそうな先生だね!
りんは、あの先生かな!」
りんちゃんが指差したのは、身長がまわりの先生より
ちょっと低めの、髪の毛ツンツンで、かなり日焼けしてる
若い男の先生。
…って、うわっ!あん時の!
地味に動揺してしまう。
「ちょっとカッコいいよね~!
貴重な若い男の先生だよ!」
「そ、そなの?」
見渡してみると、たしかに3、4人くらいしか若い先生はいない。
うちの中学校は1人くらいだったから、少ないかどうか分かんないけど…。
「それでは、1年A組から順に発表させていただきます。」
教頭先生の声に再びざわめき出した体育館。
うちの学校は、A組1クラスだけが国際科で、
BからEの4クラスは普通科。
わたしはC組だから、発表はけっこうすぐ。
「やばいよ結衣ちゃん!めっちゃ緊張する…。」
君、まじでかわいいわ…
カイロごしごししながら寒そうに待つりんちゃんがかわいすぎて、
ついついオッサン目線になってしまう。
「1A、渡辺先生。副担任は山崎先生です。
1B、浅井晴斗先生。副担は…」
「えっ、えええ!?うそっ!
結衣ちゃん結衣ちゃん!もうあの先生呼ばれてる!
どうしよ~サイアク!」
前を見ると、よろしくお願いしますとお辞儀するあの先生。
「ど、ドンマイドンマイ!来年こそは、だよ!
うん!」
「来年か~待てないよ~」
ごめんね、りんちゃん。ほんとは
よっしゃ!サイコー!って思っちゃったよ…
そして、来年も担任でないことを祈るよ…!
ごめんな…
教室に戻ると、私たちの担任はどうやら
わたしがテキトーに選んだあのおばさん先生の様だった。
小林先生、というらしい。
りんちゃん情報によると、38歳だけど、まだ独身だとか。
それよりわたしは、りんちゃんの情報収集の速さに感動したけど。
ちなみにあの先生は、浅井晴斗先生、独身、24歳、らしい。